太田胃散とショパン

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昔から変わらないですね、太田胃散のコマーシャルに使われるピアノ曲。この曲をコマーシャルのためにかいたと思われている人もいらっしゃるようですが、実はショパンの24の前奏曲 作品28より 第7番 イ長調(Frédéric F. Chopin - 24 Prelude, Op. 28: No. 7, Andantino in A Major)。フレデリック・ショパン(1810-1849) はポーランドの前期ロマン派音楽を代表する作曲家で、ほとんどの作品が素晴らしいピアノの独奏曲です。有名どころと言えば、 「子犬のワルツ」、「幻想即興曲」、「雨だれ」などなど旋律が美しい曲ばかり。

太田胃散の「作品28より 第7番」は人によって弾く速さが違いますが、3拍子の16小節しかない、だいたい30秒〜50秒くらいの曲なのでコマーシャル(30秒)にぴったりだったのでしょうね。あと「胃腸薬」だから「イ長調」(いちょう)っていう噂もあるらしいですよ。日本人にしかわからないちょっとしたジョークですね(笑)
「イ長調」ってよく考えるとまだ日本の古いの言い方をつかってるんですよね。曲というものには大きく分けて、音調が明るい「長調」と音調が暗めの「短調」にわかれます。

  • 英語では major/minor

  • ドイツ語では dur/moll

  • フランス語では majeur/mineur

  • イタリア語では maggiore/minore

となります。日本で音楽をお勉強された方々はよくドイツ読みのdur/mollをお使いになります。題名には日本語表記の長調/短調を、そしてジャズやポップスになるとmajor/minorの言い方が主流なのかな?私はアメリカ式のmajor/minorで使うことが多いのです。

さあ、問題は階名のカタカナの’「イ」です。あまり私には馴染みがないので「イ長調」といわれてパッと「A Major」って瞬間的に思えないのですが、これは「ハニホへトイロハ」システムを使っています。明治時代にドレミの音階や洋楽器がやって来て西洋的な音楽が人々に広まっていった中で「ハニホへトイロハ」を残そうと徹した動きがあったのだと推測します。(すみません、そこまで日本西洋音楽史に詳しくありません)

話はそれますが、少し「ドレミ」の誕生秘話。まず中世、グレゴリアン聖歌の時代に「ドレミファソラ」が誕生します。カトリック教会の修道士Guido of Arezzo(グイード・ダレッツォ)が若い聖歌歌手の指導書でGuido’s Hand (グイードの手)を発明しました。当時単旋律の人の声・歌ほど神聖なものはないと考えられており、教会内では楽器は禁止されていましたから、音階のレファレンスする(照らし合わせる)ものがありませんでした。そこでGuido は彼が考え出したGuido’s Hand で左手の五本の指と、手のひら、手のシワの位置「ウト(ド)レミファソラ」を右人差指で示して音の音階を指導したといわれています。そこから、7音目の「シ」が付け加えられ、8音目の「ド」で今のスケールが完結するようになりました。ちなみに、フランスでは今でもドの代わりにUt(ウト/ ド)も使われています。

日本では「いろは歌」のはじめ7字をとっている名残がある日本の音階名は、素敵だなと私は思っています。今の私たちの世代は五十音の「あいうえお」で学びますが、むかしむかしは「いろは歌」でひらがなを学んだんですよね。平仮名47文字全てをそれぞれ1度ずつ使って作られた、とても知的で風情ある「いろは歌」があった存在を今一度考え直したいなとも思いました。

いろはにほへと ちりぬるを

わかよたれそ  つねならむ

うゐのおくやま けふこえて

あさきゆめみし ゑひもせすん

色は匂へど 散りぬるを

我が世誰そ 常ならむ

有為の奥山 今日越えて

浅き夢見じ 酔ひもせず

最後に太田胃散のコマーシャル。

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