テレ朝「ナニコレ珍百景」の音楽
私は日本はクラシック音楽大国(言い過ぎ?)だなーと思っています。全体的に見て日本ではクラシック音楽を聴く機会がとってもたくさんある国なんだと思っています。少なくともアメリカと比べて。クラシック音楽って聞くと、「お高くとまってる」とか「難しい」とか「寝ちゃう」(笑)という声をよく聞きますし、コンサートに出かけたり、一つの交響曲を最初から最後まで聞くっていう機会はもしかしたら少ないかもしれないですが、知らず知らずのうちに日常にクラシックの音楽が溶け込んでいるんですよ。
日常テレビをつけていると効果音(BGM)でよくクラシック音楽が流れています。有名どころを上手い具合に、その場面の雰囲気にあわせてに使われています。ゴージャスな場面に、穏やかな雰囲気とか、アップテンポに紹介しているときとか、BGMに耳をすませるとたくさん使われています。音楽関係の知人のに私がそのことで感銘を受けていることを話すと「著作権が切れてお金がかからないからね〜」とポツリ。ん〜そうかもしれないけれど、日常にもBGMの差しでもクラシック音楽が使われないアメリカなんかと比べると、本当に素晴らしい!!と一人で感動しているのです。新しい音楽の使い方を番組でしてると一人で喜んでいるんです(笑) シリーズでこれからいくつか例をあげていきたいと思います。 今回ご紹介する私が感動したBGMは テレビ朝日の「ナニコレ珍百景」の珍百景を紹介するときに流れているジャンジャンジャンジャン〜…🎶
Modest Mussorgsky: Great Gate of Kiev from Pictures at an Exhibition (4:32 から珍百景です)
こうして、映像で色々な角度からオーケストラの楽器が演奏しているのを見るとワクワクしませんか?こんなたくさんの異なる楽器で作り上げる重音を生で聴ける機会があったら是非おすすめしたいです。すごく頂点に持っていくのが上手にできてる曲だなと感じます。また、頂点に達したあとにまたもう一山あるっていう、おどろき感を番組的に十分味わってもらいたい珍百景紹介にはぴったりなんじゃないかなと思いながらいつも聞いています。
この珍百景の曲はモデスト・ムソルグスキー (1839-1881)『展覧会の絵」の最終楽章の『キエフの大門』という曲で、もともと1874年に作曲された16曲からなるピアノ組曲だったのをモーリス・ラヴェル(ボレロをかいた人って言ったらわかりやすいかな?)によってのちの1922年にオーケストラに編曲されたものが番組で流れています。原曲のピアノ組曲の方も素晴らしいですが、フランス人作曲家ラヴェルのオーケストラ編曲家としての腕を発揮している曲でもあると思います。ロシア人のムソルグスキーが展覧会で鑑賞した10枚の絵画と、5曲のプロムナードといって絵から絵へ巡回している場面をとらえており、残りの1曲は8番と9番の間に位置づけされています- 計16曲。『キエフの大門』は建築家でもあったハルトマンがキエフ市内(現在のウクライナ)の大門を描いたスケッチをもとに曲がつられ、古代ロシアからの印象を受けておりスラブ系のヘルメットのようなドーム型の屋根(cupola)が特徴的な建物が描かれています。 それがこちら。
丁度1873−74年はムソルグスキーの最も有名なオペラ『ボリス・ゴドゥノフ』の初演を迎えた後何度も上演され、表向きこの時期は彼の最盛期ではありましたが、その裏で自身の芸術性に迷い、孤独であったと言われています。「展覧会の絵」ある展覧会はムソルグスキーの友人であり画家&建築家で39歳の若さで突然亡くなってしまったハルトマン氏の絵画展で、そこで亡き友人の絵画に触れることで、心が弱っていたムソグルスキーを奮い立たせて「展覧会の絵」をたったの3週間でかきあげたそうです。いつの時代も脚光を浴びているからといって、自身の幸せは本人にしかわからないし、光と影って紙一重なんだなと思うこともあります。昨日(7/19/2020) は俳優の三浦春馬さんの突然の旅立ちに吃驚しましたが、本人にしかわかりえない事情というのを皆抱えているんだなと思うことがあります。その難しい心の描写をムソルグスキーはプロムナードで表しているのではないでしょうか。迷い、苦しみ、色々な感情が入り乱れ、でもまた一筋の光を頼りに生きていく様を、力一杯表現しているのが「展覧会の絵」なのかなと思うようになりました。ラヴェルのオケ版が編曲された時には本人は亡くなっていましたが、ピアノ組曲も素晴らしいけれど、オーケストラの編曲がなされたことで幅広く演奏されるようになり、こうしてムソルグスキーの芸術性を後世に伝えられ、私たちが演奏を聴くことができるのです。クラシック音楽は残され、また変化し続けるということも大事なんじゃないかな、とこの「展覧会の絵」を例につくづくと思います。
最後に、この『展覧会の絵』ですが、クラシックサックス奏者としても重要な曲で、オーケストラに呼んでもらえる数少なくもよく演奏される曲の一つなのです。サックスは長い曲の中(35分ほど)で一度しか出番がないのですが、「古城」(Il vecchio castello)という4曲目に出番をいただいています。私もロサンゼルスフィル(LA Phil) で吹かせていただきましたが、本当にその曲だけサックスソロの位置付けで5分弱しかないのですが、楽器の美しさとクラシック界での可能性をたっぷり知ってもらえる曲です。出番はそこだけなので、終わったら安心して最後の珍百景の曲がでてきて終わるまでゆったりと音楽を楽しめるということです。
どうせなのでサックスソロが光る「古城」もきいてみてください。
聞いたことがあるかもしれない曲をちょっとのぞいてみる。そんなことを教鞭をとっているカリフォルニア州立大学ドミンゲス・ヒルズ校でも教えている「Music Appreciation」(音楽とはなんぞや?)の講義でのレクチャーで教えています。知っているところから知らないことに『へ〜」って思って繋げられることを大事にもしています。ただ、クラシックの曲も聞いたことがないっていう学生もいるので、そういう生徒にも面白いと思ってもらう要素も大事だな、といつも映画音楽もってきたり、試行錯誤を重ねるんですが、、、うまく伝わってるといいな。